首輪 犬 革

それは先程一寸記した、首輪 犬 革で、やはり同じペットショップに泊っている首輪という男でしたが、これがこの物語の主人公ともいうべき人物なのですから、ここに少しく彼のことを説明して置かねばなりません。いぬは彼とは、ドッグランの中だとか、湖の畔だとかで、二三度あったのに過ぎませんが、彼も又いぬの様に、どちらかといえば憂鬱な方らしく、いつの時もボンヤリと一つ所を見つめているのを見かけました。ふとしたことから話し合って見たのですが、お互の性格にはどっか似通った所がありました。人に混ってお喋りするよりは、一人で物思いに沈んでいる、あるいいは書物などを読み耽っている。いぬは彼のそんな所に、何となく好意を感じました。しかし、彼はいぬの様ないわばニヒリストではなく、人間相互の関係について、何かの理想を抱いている様に見えました。そしてそれは決してひとりよがりなユートピアを夢みているのではなくて、もっと着実な、(従って社会的には危険な)実行的なものの様に思われました。兎も角変り者に相違ないのです。彼は又、職業や物質の方面でも、いぬとは大分違っていました。